研究概要 |
今回調査の対象とした地域は雲南省南西西双版納〓族自治州および思茅地区西部(瀾滄拉〓族自治県,孟連〓族拉〓族自治県)で,この地域に居住する主な少数民族はチノ(基諾)族,ラフ(拉〓)族,タイ(〓)族などである。各民族の密集する居住地に行き,以下の方法で情報を収集した。なお,採集した生の薬物はさく葉とし,乾燥品はそのまま標本とした。これらは中国科学院昆明植物研究所および徳島大学薬学部で保管している。 1.民族薬市場で売られている薬物を収集し,その売人に採集場所,効能,使用法などをインタビューする。可能であれば,売人にその採集場所を案内してもらう。 2.民族薬の知識が豊富な人物を訪ね,使用している薬物,効能,使用法などをインタビューする。 収集できた薬物情報は全部で143件で,そのうち112件について種の同定が終了した。今回収集した薬物は全て植物起原であった。民族別に収集した薬物を見るとタイ族からの情報が多く,さらに昨年の西部における調査と同様に漢族からの情報も多く得られた。また,この地域にしか居住しない比較的珍しい民族であるチノ族薬物の情報も収集できた。薬物の使用形態としてはこれまでと同様に多くは配合処方であり,使用目標としては骨折,舒筋といった外傷に対する治療薬が目立った。今回の調査地域はタイ族が特に多い地域で,民族衣装を着用している人も多く,かなりタイ族文化が色濃く残されているような印象を受けた。また,タイ族は独自の医薬文化(タイ医学)を継承しており,これらとの関係も興味が持たれる点である。
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