研究概要 |
オートマトン理論でよく知られている決定性有限オートマトンの状態数最少化アルゴリズムをグラフ圧縮技術の一種と見なし,画像圧縮の一手法として古くから知られている領域4分木のポインター構造を簡略化するアルゴリズムとして適用することで4分木圧縮形式の実用性を検討した.なお,本研究で提唱しているオーバーラップ制約付き分解法は,領域4分木の正規化という問題に対して有効であることが知られている. 結果として,2値画像ではCIFやPNGといった既存の画像圧縮形式に対して圧倒的に優位な圧縮率(簡略化4分木では平均28%であるのに対してGIF, PNGではそれぞれ38%,43%)を達成できることが分かった,しかしながら,グレースケール画像やカラー画像に対しては2値画像用の簡略化4分木を単純に重ね合わせただけの構造を採用したために思うような圧縮効率が得られなかった.このことは2値画像からカラー画像へ圧縮法を一般化する際には画像ビットプレーン間の関連性を十分考慮する必要があることを示している.なお,本手法に基づく画像圧縮解凍ルーチンを初心者でも気軽に行なえるようGUIインターフェースを持つJavaシステムを開発した. 一方,純粋な理論ではあるが2次元画像上で動作するオートマトンの認識能力に関して,o(log n)以下の領域計算量しか持たない1ペブル決定性チューリング機械は非決定性のものより真に受理能力が劣るという結果が得られた.領域計算量とはアルゴリズムを実行する際に作業用に用いる内部メモリーの使用量のことであり,また決定性1ペブル2次元有限オートマトンが2値画像の連結性を認識できるという事実を考えれば実用的にも興味深い結果である.
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