World Wide Web(Web)の構造を有向グラフとみなし、Webグラフとして再定義し、それらの性質を見出す研究、あるいはその上で、さまざまなWebアルゴリズムに活用しようとする研究が活発である。Webグラフは、非常に巨大でその構造が動的に変化し続けている点で、従来のグラフとは大きく異なり、既存のグラフ理論やグラフ・アルゴリズムの成果が直接適用できない場合が多い。そこで本研究課題の初年度の目的として、Webグラフの理論的なモデルを比較検討し、必要であれば新規に提案すること、Webグラフで発生する固有の問題を明らかにし定式化した上で、既存のグラフ・アルゴリズムのWebグラフへの対応を可能とする再構築や、新規のアルゴリズムの設計・開発、ならびにそれらを用いた計算機による有効性の検証を掲げた。 Webの内部では、共通の興味をもつコミュニティが自然に形成されることが知られており、その存在を認知することは、サーチエンジンなどのWebアルゴリズムに非常に有効であることがわかって来ている。さらに、グラフの部分構造としての2部クリークが、それらのコミュニティを特徴づけると考えられている。そこで本研究では、Webグラフにおける2部クリークを漏れなく列挙するアルゴリズムの考案・設計した。またこれらを実装し、理論モデルや実際のWebにもとついて生成されたWebグラフに対して、そのアルゴリズムを適用、実行し、Webグラフからコミュニティを抽出することに成功した。その結果、Webの大きさに対するコミュニティの分布など、さまざまな特徴的な性質が確認された。 これらの成果は、15年度末が迫って得られたものが多く、課題年度内に公表の機会を得るものが少なかったが、公表に向けた準備は進行中である。さらに、現在もなお重要な観察が次々と得られており、これらを来年度の課題の一部として継続遂行の予定である。
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