巨大な探索空間をもつ人工知能的応用問題に対して、高性能ハードウェアを生かした探索アルゴリズムの研究は非常に進歩してきた。そのプログラムの基礎技術の一つに局面表技法がある。本研究の目的は、この局面表技法を中心にして、高能率で一般的な新しいデータ構造と探索法を開発し、理論解析と応用例によって新しい技法を評価するとともに、未解決問題の解決を試みるものである。 本年度は、4年間の研究の最終年度にあたるが、前年からの継続研究として、局面表技法の定式化、理論解析、計算実験を行い、いくつかの応用例をとりあげた。2004年ゲームのヘックス(Hex)における必勝手順を構成する課題に対してユニオン連結という概念を導入した。その後その概念を発展させて新しい技法を考案した。本年度は、それを一般的に定式化し、それに基づく技法を適用することにより、従来の方法では難しかった大きさの盤に対する必勝手順を構成した。この結果は、2006年10月にワークショップで発表したが(現在雑誌論文として投稿中)、海外の専門家からも良い評価をえた。また、局面表技法に基づく探索アルゴリズムの応用問題として、数理パズルを自動創作する課題を取り上げ、いくつかの新しい結果をえた。これには、筆者が1996年に提案したランダム簡約法を適用した。具体的な応用例としては、協力詰問題の自動生成、Number Place(数独)の最少ヒント数問題の探索などである。本研究全体として、4年前の研究開始時点の計画を大きくこえる成果は、Hexに関する新しい概念の導入とその展開である。それによって2000年にvan den Herikがあげたゲーム研究の未解決問題を解決することができた。
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