研究概要 |
最終年度となる本年度は,昨年度までに検討してきた非同期双方向同時(デュプレックス)データ転送のための多値回路について,さらに改良点について検討した.多値データ表現と多値電流モード回路を活用することで,非同期デュプレックス・データ転送を2線のみで実現できる.しかしながら,単方向データ転送の場合と比べ,「多値中間値」のダイナミックレンジが「7値」となる.このため,この多レベル電流値をできるだけ高速に検出する回路技術について検討した.具体的には,高感度のアンプ回路やフィードバック回路を組み合せ,高性能化できることを明らかにした.また,本研究で考案した「多値符号化に基づく高速非同期デュプレックス・データ転送技術」の有用性を示す典型例として,強力な誤り訂正符号能力を有するLDPC(Low-Density Parity-Check)デコーダの構成に活用することを検討した.LDPCデコーダでは,Variableノードとcheckノード間でデータをデュプレックス・データ転送が必要となる.各ノードでは簡単な論理演算が実行されるだけであり,かつ実用的応用ではノード数が数千ビット必要であるため,このデュプレックス・データ転送が処理のボトルネックとなることが問題となっている.そこで,本提案方式を活用し,その有効性について検討した.これらの成果は,多値論理研究に関する国際ジャーナル「Journal of Multiple-Valued Logic and Soft Computing」に採択されると共に,2005年多値論理国際シンポジウム「ISMVL」,最新VLSI技術として著名な国際会議「Symposium on VLSI Circuits」などに採択された.
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