研究概要 |
本研究は,環境の変化が比較的短い時間で発生する開放型分散オブジェクト指向計算環境において,システムが環境の変化を越えて有効に機能するための自律的な環境適応性に関して研究を行うものである.環境の変化に適応するための戦略はシステムを構成するオブジェクト毎に異なるため、自らを再構成することで環境の変化に対して適応する能力を個別のオブジェクトに与えた. 本年度はまず,オブジェクトの再構成に必要な柔軟な構成要素オブジェクト間通信を実現する手段として,所謂,生成通信方式を採用し,そのためのプロトコルの設計,通信を中継するmail boxの設計と実装を行った. 更に、本年度は、メッセーの順序制御、耐故障およびデータのキャッシュを対象として適応性の実現を試みた。 まず、複製グループなどのオブジェクトの一貫性を保持するためにメッセージの順序制御が必要となるが、最適のプロトコルは、ネットワークの状況やメッセージの交換頻度等により異なる。これらは時間的に変化するもので、適応的にプロトコルを切り替えることで、最適の性能を保持するアルゴリズムを提案し、シミュレーションにより有効性を検証した。また、プロトコル切り替え時の一貫性を保持するアルゴリズムもあわせて提案した。 次に、オブジェクトの複製化を行うことにより信頼性を向上させることに関して、利用者の要求する信頼性のレベル、基盤となるシステム(ハードウェア、ネットワーク、OSなど)の信頼性の変化によって、複製の個数や一貫性保持のためのプロトコルを変化させる手法を提案した。これにより、最適のコストで必要なレベルの信頼性を確保することができた。 更に、データのキャッシュについては、ネットワークの遅延や、有効帯域幅、利用者の要求によりキャッシュの更新方式を変化させる方式を提案し、シミュレーションにより適応的にキャッシュの一貫性を保つことが確認できた。
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