研究課題
本研究は、開放型分散オブジェクト指向計算環境において、環境変化に対してシステムが自律的に適応することにより、一定の性能や信頼性を維持することを目指す。システムを構成するオブジェクトは、自らを再構成することにより環境変化へ適応する。これを再構成可能オブジェクトと名付けた。まず、実装面について、昨年度までに提案した再構成可能オブジェクトに関し、遠隔オブジェクト間の通信手段を実現した。これは、予め複数のTCPコネクションを確立しておき、これらをプールして共用することにより、コネクションの確立と開放のオーバヘッドを低減するとともに、資源の有効利用を図った。次に、応用面として、メンバであるオブジェクトが動的に入れ替わる開放型分散オブジェクト指向計算において、共有資源へのアクセスの相互排除のためのクオラム・コンセンサスに関して、動的にクオラムを再構成するアルゴリズムを提案した。これは、クオラムを構成するオブジェクトのクオラムからの離脱やクオラムへの加入によるクオラムの再構成を、システムを停止することなく、一貫性を保って行うことが可能である。更に、昨年度提案した適応的な耐故障戦略に対するオブジェクトのアーキテクチャを提案した。これは、オブジェクトの複製化により信頼性を向上させる際に、複製の個数や一貫性保持のプロトコルを変化させることにより、利用者の要求する信頼性のレベルや基盤となるシステムの信頼性の変化に適応するものである。アーキテクチャとして、オブジェクト内にプロトコルを変える際の一貫性保持のための機構を持つ。三年間の本研究において、再構成可能オブジェクトの構成法を提案するとともに、適応性の応用として、コストを最適化する適応的な耐故障制御、メッセージの順序制御、一貫性制御、遠隔データへの性能とデータ品質に対する適応的なアクセス等を提案し、有効性を確認した。
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