研究概要 |
本研究の目的は,SAN/NASを用いたSoC(システムオンチップ)設計システム向け高信頼分散ストレージクラスタを実現するための,ディペンダブルコンピューティング技術を確立することである.そのための要素技術として,本年度は以下のような技術について検討した. 1 多数のIPバージョン管理のために広域に分散したストレージクラスタを前提として,それらのためのデータ複製プロトコルについて考察した.昨年度,データ複製プロトコルの一つとして,グリッドプロトコルとツリークォーラムプロトコルとのハイブリッドデータ複製プロトコルを一般化した台形プロトコルを提案した.本年度においては,この台形プロトコルに確率的クォーラムシステムの概念を導入した.確率的台形プロトコルの解析と実装について検討した.まず,確率的台形プロトコルにおいて見かけ上データが得られるという意味でのアベイラビリティと,最新のデータが得られるという意味でのアベイラビリティをそれぞれ定義し,これらの解析をおこなった.次にシステムに対する負荷の解析として,データアクセスの際の期待アクセスノード数を導出した.また,確率的台形プロトコルおよび従来の代表的なデータ複製プロトコルを実端末上で動作させるための具体的な設計および実装を行い,データアクセスに対するシステムのスループットを測定評価した. 2 遠隔地にSAN/NASが存在する状況を考慮して,分散システムにおけるチェックポインティングの設定について検討した.特に,本年度においては,非連携チェックポインティングと連携チェックポインティングからなるハイブリッドチェックポインティングの回復能力について議論した.はじめに,非連携チェックポインティングのロールバック間隔の分布とロールバック時の期待キャンセルメッセージ数を評価した.次に,連携チェックポインティングのメッセージ複雑度を見積もり,全体としての期待オーバヘッドを最小化する連携チェックポイント間隔について考察した.
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