研究概要 |
平成15年度では、数値シミュレーションや計測装置から生成される膨大な数値データ(以降ボリュームデータ)から効率よく等値面生成を行うために、ボリュームデータの特徴を単純な図形で表現した「特異点グラフ(CPG : Critical Point Graph)」を利用する手法を開発し、その有効性を確認した。 特異点は、速度ボリュームデータでは、ベクタ0の点、そしてスカラボリュームデータでは、勾配ベクタ0の点と定義される。これら特異点について、固有値を求め、特異点の分類(極点、鞍点、渦中心)を行う。鞍点と分類された特異点から固有ベクタ方向に微小距離移動した点から、速度場、またはスカラ勾配に沿って、極点をつないでできるスケルトン形状がCPGである。 スカラボリュームデータにおいて定義される等値面は必ずCPGに交差する。このことを利用すると、等値面のスカラ値が与えられたとき、ボリュームデータ全体で交差の有無を探索するのではなく、CPG上で探索し、等値面との交差点から自己増殖的に等値面を生成することができる。この手法では、等値面生成に必要なコストを大幅に削減できることが期待できる。 我々は、本研究に先駆け、極点同士を接続した極点グラフ(EG : Extrema Graph)を用いて、効率の良い等値面生成アルゴリズムを提案した。この場合、EGに境界面リストを加えた参照用データ構造を作成する必要があったが、CPGの場合、このような追加データ構造は必要とされない。我々は、大動脈弓内部血流シミュレーションをボクセル化することによって得られた128x128x128の解像度のボクセルデータに対してCPGを用いた等値面生成アルゴリズムを適用した。スカラ値を変化させることによって、等値面を構成する三角形の数は、2,390〜134,942まで変化したが、等値面生成処理について、おおよそ2倍程度の高速化を確認することができた。
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