研究概要 |
本年度の研究成果としては3つのことがあげられる. 第1に,数式で記述されていない3次元的な実データを,モンテカルロ・シミュレーションと陰関数曲面の技術を用いて精密に可視化できることがわかった.具体的には,形状測定装置(レーザ・スキャナなど)で得られた点群を補間して陰関数曲面を生成し,次にその曲面上でモンテカルロ・シミュレーションを行って点群密度を増大させて,精密なポイント・レンダリングで可視化することに成功した.この成果をさらに発展させることで,実データとしてのボリューム・データの可視化や形状解析も可能と思われる. 第2に,上記の手法に並列モンテカルロ・シミュレーションの技術を導入することで,計算速度がプロセス数に正比例して増大するという,理想的な速度向上を実現できることがわかった.従来の並列モンテカルロ・シミュレーションは,領域分割の考え方で並列化を行っているが,本研究では,モンテカルロ・シミュレーションの背景にあるブラウン粒子系を多粒子系化することで,プロセス間の干渉が極めて少ない並列計算を達成している.また,各プロセスが可視化や形状分析の対象となる3次元領域の全体の情報を持っているので,シミュレーションの途中で各プロセスの役割を適応的に変更することも容易である. 第3に,上記の手法が任意次元の面積・体積の数値計算にも有用であることを確認できた.我々の手法は,任意次元の空間において,多数の点群を一様に高速生成できる.この一様性を用いれば,単純な比例計算によって,面積・体積を計算できる.これは,複雑形状の理解に非常に有用な性質と思われる.
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