本研究の目的は、例題からの学習手法により信頼度の高い識別関数を少数サンプルから動的に構築するための手法を確立することである。今年度は、引き続き自然情景中の文字パターンの識別を対象とすると共に、新たに3D物体(車)認識、及びデータの動的構築に基づく学習手法に関する研究を行い、手法の改良、有効性の確認を実施した。 ・boostingを用いた識別関数の構築の高度化と3D物体認識(画像からの車検出)への応用 昨年度の研究において、boostingによる少数RBFを用いた識別関数の構築の研究を実施した。今年度は、さらに画像のHaar Waveletを用いたスパース化によって得られる多次元ベクトル中の単一成分のみに基づく単純な識別関数を用いたboostingにより、認識速度を大幅に改善できることを実験により確認した。またこの手法を3D物体(車)検出問題に適用し、有効性を確認した。 ・動的仮想データ構築に基づく学習手法の検討 昨年度の研究において文字パターンの識別を対象として、鏡像パターンの生成などに基づく仮想データを用いた学習の有効性の検証を行った。しかしながら、この仮想データ生成手法は入力画像に対するアフィン変換に基づいていたため、現実に得られるパターンの多様性に十分対応できないという限界があった。そこで今年度の研究においては文字データを構築するサンプル点の筆順を表す時系列データ(座標系列)が得られることを仮定し、この座標系列毎にアフィン変換を施すことでより多様な仮想データ生成を行った。本研究ではSVMを学習アルゴリズムとして用いたが、この場合、サポートベクター以外のデータは追加しても識別関数の構築に効果はない。そこで、本研究では実際に学習に用いるデータを元データから得られたSVMの出力値を用いて限定することにより、より少ないデータで十分な識別能力が得られる可能性があることを検証した。
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