研究概要 |
図形の表現や操作のための手法は,個別かつ経験的に記述,開発されているため,それらの手法の間での特長の比較,表現の互換性の保証,操作の妥当性の検証は容易ではない.本研究は,その問題を解決するために,図形処理システムの仕様記述・検証手法の確立を日的とする. 本年度は特に,図形オントロジーの構築を目指して,次のことを明らかにした. 1.既存の各種の図形ソフトウェアを調査し,図形オントロジー構築に必要な図形クラス,図形属性,図形間の概念関係の整理・体系化を行った.特に,図形クラスとして,点,直線,長方形,円など14種類を扱った.また,それら静的な状態におけるオントロジーの構築に加え,図形操作の種類,各図形操作の特性など,図形操作を介した図形の動的変化についても整理・体系化を行った.特に,図形操作として,追加,移動,色変更,消去などを扱った. 2.図形クラスおよび図形インスタンスをエージェントと見なして,それらの属性やそれらに対する操作をマルチエージェント系自己認識論理(MAEL),および,その拡張を用いて記述する手法を構築した.その際,次の手法を用いた. (1)図形属性をエージェントが持つ知識であると捉える. (2)エージェント間での知識交換関係として,図形間の概念関係をメタ知識により表現する. (3)図形に対する操作は,操作前後の図形間の関係として表現する.このとき,「全体に対する操作は部分にも適用される」という性質が成り立つ操作があることに注意し,部分クラスの図形に相当するエージェントに対して,操作に関する公理を与えることにより,図形操作を表現する.
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