研究概要 |
図形の表現や操作のための手法は,個別かつ経験的に記述,開発されているため,それらの手法の間での特長の比較,表現の互換性の保証,操作の正当性の検証は容易ではない.本研究は,その問題を解決するために,図形処理システムの仕様記述・検証手法の確立を目的とする.本年度は特に,図形オントロジーの構築と,図形処理操作の検証手法の確立を目指して,次のことを明らかにした. 1.点,直線,長方形,円などの図形クラスや図形インスタンスをエージェントと見なして,それらの属性や,追加,移動,色変更,消去といった図形操作をマルチエージェント系自己認識論理(MAEL)によって記述する手法を構築した.その際,(1)図形属性をエージェントが持つ知識であると捉える,(2)エージェント間での知識交換関係として,図形間の概念関係をメタ知識により表現する,(3)図形に対する操作は,操作前後の図形間の関係として表現する.このとき,「全体に対する操作は部分にも適用される」という性質が成り立つ操作があることに注意し,部分クラスの図形に相当するエージェントに対して,操作に関する公理を与えることにより,図形操作を表現する,という手法を用いた. 2.作図システムSync/Drawにおける図形操作の正当性の検証を行った.すなわち,図形表現,図形の意味表現がそれぞれ代数系と見なせることに着目し,まず,Sync/Drawにおける図形表現であるオブジェクトの再定義を行った.次に,(1)オブジェクトからMAELの論理式集合への関数(図形表現の意味関数),(2)オブジェクトの書換え規則(図形表現操作関数),(3)MAELの論理式集合の間の対応を示す関数(意味操作関数)を定義し,それらの間に可換性があることを示した.
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