研究概要 |
本研究の目的は、空列代入を許す正規基本形式体系(EFS)の正例からの学習可能性を調べると同時にその学習アルゴリズムの開発を行うことである。 15年度は、原始形式体系(Primitive Formal System, PFS)の正例からの学習可能性を証明した。ただし、2つの公理に含まれる正規パターンの構文に関してある条件を課した。16年度においては、下記の成果が得られている。 (1)原始形式体系を含むより一般的な単純形式体系及び正規形式体系の正例からの学習可能性 これらの形式体系は、公理の個数を高々k個に制限したとき、空列代入を許さない場合は学習可能であることが示されている(Shinohara95)。しかし、本研究では、空列代入を許す場合は、これらの形式体系は学習可能でないことを証明した。 (2)正規形式体系に制限を課した形式体系の学習可能性 原始形式体系は、丁度2つの公理からなる正規形式体系であるが、別の構文的条件を課した正規形式体系を導入し、その正例からの学習可能性を示した。 (3)SH言語への応用 (2)で得られた結果を単純SHシステムで生成される言語の学習問題に応用した。単純SHシステムは、DNA配列の組み換え、すなわちスプライジングモデルを簡素化したモデルである。SHシステムで生成される言語は、ある特別な性質を有する正規言語である。本研究では、単純SHシステムで生成される言語を、空列代入を許す正規形式体系を用いて、構成し、上記(2)の結果を用いて、その正例からの学習可能性を証明した。 (4)空列代入を許す正規パターン言語の積(共通部分)及び和の学習可能性 正規パターン上の決定木で定義される言語は、正規パターン言語及びコ正規パターン言語に高々有限回の積及び和を施して得られる。本研究では、正規パターン言語の積・和を有限回施して得られる言語の族が有限の弾力性を有することをしめし、その学習可能性を示した。コ正規パターン言語に関しては未解決である。
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