研究概要 |
カーネル相対主成分分析によるパターン認識を効果的に実現するために,他カテゴリーを抑制するための方法や,識別関数に関して研究した。両者を組み合わせることによって,単なるカーネル主成分分析を用いるよりも高い認識精度を実現することができた。また,カーネル相対主成分分析のフルランクバージョンである,抑制型カーネルサンプルスペース(SKSP)法を本研究室所属の学生が考案し,固有値展開の計算を不要にするなど,学習時の計算を簡単化した。さらに,多数の標準2クラス識別問題の計算機実験において,SKSP法は,サポートベクターマシン(SVM),アダブーストによる回帰,カーネルフィッシャー識別よりも高い識別精度を示した。SKSP法は学習時には計算量が少ないが,認識時に他の方法と比べ計算量が多い。その計算量を削減するための手法について研究を行い,次年度以降,計算機実験によって,その有効性を確認する予定である。一方,主成分分析は固有値展開で,それを拡張した相対主成分分析は特異値分解(SVD)を用いて理論が展開されている。そして,カーネル法は,関数空間の固有値展開であるヒルベルト・シュミット展開を用いて理論が構成されている。従って,SVDを用いることによって,カーネル法の拡張が可能になる。この考え方に従い,カーネル法をSVDで拡張すると共に,SVMの元となる最適超平面識別器を拡張したものを組み合わせ,可変カーネルによるSVMの理論を構築した。また,本科学研究補助金で購入した物品は画像符号化のためのフィルタ理論構築に関する研究,パターン認識を含めた画像処理を高速に実行するための計算機アーキテクチャに関する研究にも有効に利用されている。
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