研究概要 |
本研究は,現状ではまだ十分ではないパターン認識における認識精度を向上させるために,研究代表者らが考案した,抑制すべき信号が存在する場合において主成分を抽出するための相対主成分分析の理論に,非線型写像によって複雑な識別境界を実現することができるカーネル法を適用して発展させるものである.本研究における成果は次の通りである.1)カーネル相対主成分分析の理論を確立し,カーネル関数と標本点からカーネル相対主成分分析を行うための作用素を与える解析解を求めた.2)カーネルグラム行列が正則である場合の簡単なカーネル相対主成分分析の解析解を与え,カーネル相対主成分分析の実現を容易にした.3)計算機実験によって,カーネル相対主成分分析の利点を示した.4)カーネル相対主成分分析の特別な場合に与えられるカーネルサンプル空間法や抑制型カーネルサンプル空間法を提案し,その解析解を与えた.この方法は制限されたものであるにもかかわらず,多くの問題で,カーネル相対主成分分析と同様の認識精度を示した.また,解が簡単になることを利用して,追加学習のための理論を与えた.5)既存のカーネル法で用いる非線型関数は1つであるが,2つの異なる非線型写像を使って理論を拡張した非対称カーネル法の理論を構築し,サポートベクトルマシンなどに適用することによって,今後のカーネル理論発展のための基礎を築いた.また,非対称カーネル法を用いて,カーネルパラメータを可変とする識別器を構成し,認識率を向上させた.6)その他の研究として,新しいサブバンドフィルタのための理論を構築し,画像符号化の効率を向上させる研究や,画像認識や信号処理を行うための計算機アーキテクチャに関して研究を行った.
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