2足歩行ロボットの新たなメカニズムと制御アルゴリズムを開発した。これはメカニズムの自励的運動を利用して、それを安定に継続させるため、アクチュエータによる運動補助を行うものである。これにより、極めて少ないエネルギーで歩行を持続できる。 新たなメカニズムは、足先の伸縮アクチュエータによって地面をける運動を行う。今年度は、左右の足踏み運動のみを検証するため、簡単な実験装置を試作した。これは足先に空気圧シリンダを装備し、ジャイロと接地センサにより状態を検出できる。本体のサイズは人間の約半分である。 新たなアルゴリズムは、アクチュエータの動作タイミングを調整し、ロボットの自励的左右運動を減速させることなく持続させるものである。そのキーとなる点は、支持脚切り換え時に瞬間的な遅れもなくシリンダを伸張させてロボットの自励的動作を妨げないようにすることである。切り換え時の接地センサ信号を感知してからシリンダに空気を送る方式では、約140msecの遅れが生じ、スムーズな切り換えができなかった。そこで、以下の方法を採用した。支持脚切り換えより以前に、支持脚のシリンダにあらかじめ空気圧を付加して力を発生させる。この力は支持力より小さいため、支持脚期間中にはシリンダが伸張しない。支持脚切り換え時に支持力が弱まると、すかさず伸張を開始する。この方法により、スムーズな切り換えが実現できた。 このメカニズムとアルゴリズムでは、極めて少ないエネルギーで足踏み運動を継続できる。実験ではシリンダの出力エネルギーは一歩約1.32ジュールであった。一歩の周期は0.7秒で、約1.9ワットで動いていることになる。これは、このサイズの2足歩行ロボットとしてはきわめて小さいエネルギーである。 また、このアルゴリズムでは、ある程度の高低差のある不整地においても歩行を継続でき、実験では10mm程度の高低差に対応できた。
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