本研究は、2足歩行を省エネルギーで行うことを目的とし、その基礎となる知見を得るため、理論的および実験的検討を行った。 理論的検討では、歩行ロボットのメカニズムが持つ自励的な運動周期を利用する歩行が、どれだけのエネルギー供給で継続できるかを、足の開き幅と重心高さの関係から導いた。 実験的検討では、2次元平面内の足踏み実験機を製作した。これは、左右に鉛直の空圧シリンダをもち、蹴り出しを行う構造である。本体の傾斜角をジャイロで計測し、シリンダへ空気を送るバルブの開閉タイミングを調整している。これによりメカニズムの自励的運動を減衰させずに継続させることができた。この制御は単純に着地に合わせて蹴り出し用の空気を供給するのでは実現できず、あらかじめ空気をシリンダ内充填しておき、自励的運動によってシリンダにかかる力が減ることによって伸張させる制御法を新たに開発した。 実験におけるアクチュエータ出力は可変であり、正確な値は計測できていない。しかし、出しうる最大の出力が理論計算値の約2倍であり、これを制御で調整して歩行していることを考えると、良好な結果である。実際の値は、質量10kg、一歩0.7秒の定常足踏みで、最大1.9Wの出力であった。 また、着地面の高さ変化に対応させることができた。バルブの開時間を調整することで、空圧アクチュエータの蹴り出し力を増減させ、ロボットの自励運動を安定化するものである。具体的には、タッチセンサとジャイロによって接地点の高さ変化を検出して、それに比例してバルブ開時間を増減する地形対応フィードフォワード制御、歩行周期の左右の差に比例したバルブ開時間調整を行う運動フィードバック制御を開発した。実験では、足の開き幅300mmに対して20mmの着地点高さ変動があっても安定な歩行を続けられることを確認した。
|