研究概要 |
進化型ロボティクスで人工神経回路網を取り扱う際に,進化的探索の困難性をあげている最大要因の一つであるneutral networksに関して,効果的な人工進化をどのように構築したら良いかという視点から,いくつかの結果を導くことができた. 第1に,neutral network上での探索集団の移動速度すなわち進化速度の計測を行い,error thresholdと最適突然変異率がneutral pathの幅により変化することから,標準GAにあるような固定突然変異率を採用する時には,fail safeを意識した低い突然変異率を採用しなければならず,十分な性能が得られないことが多いことを明らかにした.第2に,これまで多峰性問題などの多くのベンチマーク問題などでは集団の収束を遅らせるように弱い淘汰圧を使うことが推奨されていたが,逆に,neutral network環境下ではふさわしくないことも明らかにした.第3に,これらの知見を下に,neutral networksを含むベンチマーク問題であるtNK問題を取り上げ,探索集団の進化挙動の観測を行った.第4に,neutralityに起因する問題の困難性を表す指標として,分子生物学における根井の標準遺伝距離を用いることを提案した.第5に,これらのことを応用問題で検証した.第6に,共進化モデルにおける淘汰の施し方に関して自然生態学に基づくモデルを構築し,比較検討した. グリッド進化計算環境やマルチロボットシステムは,今年度設計および作成作業を行ったころであり,論文として形になる成果は,来年度になる予定である. また,構築したマルチロボットシステムを用いて,連続空間を自律的に分割する機能を備えた強化学習機構を組み込み,自律的機能分化の発現を伴って適切な大域的振る舞いを獲得させることに成功した.
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