動画像を空間周波数帯域の異なる複数の画像に分割し、解像度方向及び時間方向に復元形状の情報を伝搬させることで、安定かつ高精度な形状復元手法の構築を目指して研究を行なった。昨年度は解像度方向への情報伝搬方式を検討し、非線形カルマンフィルタの枠組みを採用することで、形状情報のみではなくカメラと対象との相対的3次元運動も状態変数として扱うことが可能となり、両者を画像のみから決定できることを確認した。しかし、非線形カルマンフィルタは逐次線形近似を基本とすることから、処理途中での誤差の影響によりシステムが発散する危険性が高い。そこで本年度は、カルマンフィルタにおける状態変数は形状のみとし、3次元運動はあくまで決定論的な変散として求める方法をMAP-EMアルゴリズムの枠組みで構築した。 続いて、各解像度画像間での時間方向の情報伝搬を検討したところ、その確率構造はグラフィカルモデルとしてループを構成することから、厳密な情報伝搬が困難であることがわかった。そこで、時間方向の伝搬は最低解像度画像のみに対して行い、高解像度画像への情報伝搬は各時刻における解像度方向の処理に委ねることで、伝搬情報は若干減少するものの安定な伝搬を可能とする手法を構築した。 加えて、本研究課題の出発点は動きによる幾何学的拘束のみを利用する立場であったが、研究経過に伴い、輝度値の情報、具体的には画像生成過程を考慮した陰影情報を適切に扱う拘束も併用することが高精度な形状復元のためには重要であることが明らかとなってきた。このような立場からの情報伝搬アルゴリズムの構築は本研究誤題の範囲を超えるため、今年度は昨年度の一部研究の継続として、上記重要性を評価する数値解析を行った。
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