我々は、遠隔スポーツシステムに関する一般論の構築に向け、その一例として、競技者同士が離れた場所で力や位置などの物理学的情報を伝達し合う「遠隔腕相撲システム」の開発を行っている。これまでに、双方向マスタスレーブシステムの手法に基づいて「アーム型」システムと「直交座標型」システムを試作した。「アーム型」は、腕形の4自由度「力-位置入出力デバイス」を用いたシステムである。デバイス自体が腕の形をしているため、直感的な腕相撲対戦が可能であるが、デバイスの構造上、腕の動作する範囲が制限され、対戦相手の体格が再現できないという問題点もある。一方、「直交座標型」は、デバイスがXYZの3方向に駆動軸を持ち、稼働範囲内であるならば3次元的に自由に動作可能で、対戦相手の体格の再現も可能である。しかし、逆にソフトウェアにより拘束を与えなければ腕相撲の軌道を描かせることができず、制御面の工夫が性能に大きく影響することも明らかとなっている。 2年目にあたる本年度は、より臨場感のある遠隔腕相撲システムをめざして、主に次の3つの研究を行った。先ず第1の研究では、昨年度に試作した直交座標型デバイスについて、「動きの滑らかさ」と「強度」に重点を置いた改良を行った。第2の研究では、直交座標型デバイスの制御方式について検討した。昨年度は並列制御方式に基づいたシステム構築を行ったが、さらに機械的インピーダンスを考慮することでシステムの操作性がどのように変化するかを実験的に検討した訳である。第3の研究では、システムの腕部分に搭載すべき手首関節の設計に向けて、手首関節角度測定装置を試作し、手首関節の動きを測定した。実験を通して、腕相撲システムに手首デバイスを加える場合、背屈・掌屈運動、回外・回内運動の2軸を重要視すればよいことが明らかとなった。
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