Highly Optimized Tolerance(HOT)モデルによるシステム構造の最適化を行うためのプロトタイプとなるソフトウェアをC言語によって作成した。公共の場所に設置された伝染性病原菌源から拡散した病原菌を検知する仮想センサネットワークの最適構造を決定するというバイオテロ対策を単純化した問題を設定し、仮想センサ群の最適配置位置をHOTモデルに基づいて探索する数値実験を行った。感染規模とその累積発生確率との間にべき則が成り立つようなセンサネットワーク構造が得られた。病原菌源の設置場所に関する事前情報に合理性がある場合には、病原菌源の設置場所が不確定であっても、感染リスクが少ないネットワーク構造が求められる。この単純化された数値実験の将来展開においては、仮想バイオセンサは膵ランゲルハンス島の各β細胞に対応する。 HOTモデルでは、感染規模が非常に大きな事件の発生を効果的に抑制できない。この問題を克服するために、リスク評価関数に非線形係数を組み込み、被害規模の増加にともなって急速に増大するリスク評価関数を導入した。これは一般化されたHOTモデル(COLDモデルの一種)である。この一般化HOTモデルを上記バイオテロ問題に適用し、感染規模が非常に大きな事件を効果的に防止できるセンサネットワーク構造が得られた。COLDモデルによる最適化を実行するプロトタイプとなるソフトウェアが確立された。 膵ランゲルハンス島のβ細胞ネットワークを、Shemanモデルによってその動的挙動が表現されるβ細胞モデルを立方格子の各格子点に配置した細胞クラスターで近似的に表現した。β細胞集団の動的挙動を数値的に再現し、対応する生理学的データとの一致の程度を、膜電位バーストパターンの順列エントロピーに基づいて評価するソフトウェアを作成した。
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