研究課題/領域番号 |
15500127
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
春日 正男 宇都宮大学, 工学研究科, 教授 (00280909)
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研究分担者 |
佐藤 美恵 宇都宮大学, 工学研究科, 助手 (00344903)
長谷川 光司 宇都宮大学, 工学部, 助教授 (50272761)
阿山 みよし 宇都宮大学, 工学研究科, 教授 (30251078)
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キーワード | 高臨場感 / バイノーラル信号処理 / 音場再生 / IIRディジタルフィルタ / 頭部伝達関数(HRTF) / 水平面音像定位 / 感性的評価 |
研究概要 |
最近のIT技術の普及とディジタル信号技術の急速な進歩によって、三次元の音場再生が容易に可能となった。それに伴い、より臨場感あふれる音場再生技術が望まれてきており、様々な観点からの研究が行われている。それらの一つに、ある音場の空間情報を持つ頭部伝達関数(Head-Related Transfer Functions; HRTFs)を模擬して、音像定位を実現させる方法がある。その処理を行うには、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いるのが一般的であるが、FIRフィルタによる処理は高速な演算を必要とするため、実際の視聴音場での実時間処理、特にフィルタ係数の切り替えが困難であるという問題があった。このために、より安価で簡易なシステムへの移行を妨げてきた。 このような背景の下、より簡易なシステムで、臨場感のある音場を再現するために、FIRフィルタと比較して少ないフィルタ次数での実現が可能であり、フィルタ係数の変更が容易なIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いた手法が提案され、音像の方向定位に関する研究が数多く行われている。しかしながら、音像の距離定位に関する研究は数少ない。そこで、本論文では、音像の距離定位の実現を目的とし、HRTFをFIRフィルタで模擬する方法と、IIRフィルタで近似する方法を用いた。さらにIIRフィルタで近似する際に、後方に定位しやすい周波数帯域に注目し、この点を考慮した条件を設定した。そして、それらの設計条件に従って近似したHRTFを用いて、2スピーカ再生による音像の距離に関する定位実験を行った。また、得られた臨場感に対して、視聴者の感性的観点から評価する手法の検討も行った。その結果、FIRフィルタを用いた場合、左右と前方向では、50cmと100cmの位置において音像の距離定位は可能であり、後方向では、50cmの位置において定位可能であった。また、実験では、IIRフィルタを用いた場合、FIRフィルタに比べて若干精度が劣る結果となったが、検討の結果、後方に定位しやすい周波数帯域での近似精度を高め、これにより後方への定位精度を向上させることができた。さらに、2スピーカを搭載した携帯電話を用いた音像定位の実験も行った。その結果、見開き60°の範囲では音像定位の実現が可能であるとの新しい知見が得られた。
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