研究概要 |
特殊な環境,例えば,船舶のエンジンルームや空港の駐機場などの高騒音下においては,例え特殊なマイクを用いても,マイクから受音する音声の音質が騒音の侵入により著しく劣化し,作業員同士や作業員と指令センターとのスムーズな意思のコミュニケーションが非常に難しい.そこで本研究では,このような例外的高騒音環境下においても,通常の状態と同じような音声コミュニケーションを実現する手法を開発する.本年度の研究実績は以下のとおりである. 1.双子型SOMを用いた音声変換 我々の提案した双子型SOMを用いて,骨導音声(環境騒音の侵入を防ぐために,発話時における話者の顎骨の振動を検知し,それを音に変換する特殊なマイクから受音した音声)のコードブックから気導音声(通常のマイクから受音した音声)のコードブックヘの変換が実現できた.変換された気導音声のコードブックを用いて音声を合成したところ,音質の改善がみられた. 2.コードブックサイズと音質改善度合いの関係 音質の改善度合いは,用いるコードブックの大きさに影響される.コードブックサイズと音質改善度合いについて調べるため,日本語の発話に現れる音素を,すべて含むように構成された100単語の音声を用いて,実験を行った.変換前の骨導音声の量子化歪みの平均が11.1dBであったものが,コードブックサイズ32で6.6dB,サイズ256で5.8dB,サイズ1024で4.4dBまで改善された. 3.今後の課題 双子型SOMのコードブック変換性能を高めること,および,実際の現場,例えば,船舶のエンジンルームで使用される実際の音声を用いて,音質の改善度合いを評価し,実用化へ向けた検討を行う.
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