研究概要 |
研究目的:高齢化社会に向けて,高齢者に快適な環境に関する要求が年々高まっている。加齢による視覚系能力の低下の観点から,動画や移動物体を見る場合など時間的に短時間呈示の刺激を見る場合における視覚情報処理速度の低下について取り上げる。特に,本研究では,視覚情報処理過程における知覚の部分に焦点をあて,年齢により処理速度がどのように変化するかを中心に,個人差を定量的に求めることを目的とする。 研究内容と実績:本年度の研究実施分は,3カ年計画における実験1「輝度インパルス応答関数における個人差と加齢効果の測定の実施」である。知覚レベルでの視覚系の時間応答関数を測定する方法として,心理物理学的実験手法である2刺激法を用いた。 平成15年度においては,輝度パルスを用いて実験することによって,視覚系の輝度チャンネルの応答を測定した。実験は,年齢の影響を調べるため高齢者を含めた各年齢層で総計50人程度での実験を実施した。異なる時間差で2つの刺激を呈示した時の閾値データを解析することによって、被験者ごとの輝度インパルス応答関数を導出した。その輝度インパルス応答関数を比較することにより,加齢の影響を分析した。 実験及び分析の結果より,加齢によって視覚応答の強度は低下する一方で,年齢による応答速度の低下は一般的な被験時おいては見られていない。しかし,輝度に対する感度が悪い被験者群があり,このような被験者群においては,視覚応答信号が微弱で,応答速度が極端に遅く,かつ時間解像度を上昇させるための興奮の後の抑制信号が見られないという際だった特徴が見られた。
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