研究概要 |
本研究課題は,ニューラルネットによる新しい論理回路故障診断方式の開発およびその応用を行うことを目的としている。ニューラルネットが持つ故障検出性や耐故障性を,論理回路の故障診断に活用する本手法は,簡単かつ万能向き検査を行えるのが特徴であり,従来の故障診断に必要であったテストデータ系列や故障診断辞書を用意する必要がないという,他に類を見ない診断方式を有している。 これまでの手法の多くは故障診断に対して完全性を追い求めているが,本手法は診断のあいまいさを含みつつも,その論理回路が正常に機能する故障ゲートの修正候補を次から次へと挙げてくれるので,論理回路に対して手軽にプレ検査としての故障検出と故障診断を同時に行うことができる。そのため,単に論理回路の故障診断に止まらず,因果関係を伴う一般的な診断問題にも展開できる可能性を有している。 本研究の成果であるが,実験対象が小規模な論理回路であるものの,万能向きの検査結果を示す妥当なシミュレーション結果を得たこと,特に,組み合わせ論理回路内に内在する単一の静的故障(0/1縮退故障や,素子遅延故障も含む)はほぼ確実に検出・診断できること,提案方式がどのような故障モデルを捕捉できるかを考察したこと,などが挙げられる。本年度は,静的故障のみならず動的故障をも統一的に診断可能なアルゴリズムを研究したが,満足な成果は得られていない。しかしながら,本アルゴリズムの特徴である高速な(一度きりの誤差逆伝播による感度因子の)学習を生かす研究を行い,ロボットの障害物回避や経路プランニングへの適用を試みており,その成果をもとに,今後は様々な学習問題や一般診断問題に展開することを考えている。
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