研究概要 |
図書館の非利用者と利用者の選好構造の差異の分析を目的に,昨年度に実施したつくば市民を対象とした質問紙調査の分析を引き続き行った.昨年度はセグメント毎のロジットモデルの構築を試みたものの,回答者の社会経済的属性と図書館の利用行動の組み合わせによって得られる分類からは,選好意識として有意な差のあるセグメントがなかなか得ることができなかった.今年度は新たな試みとしてHierarchical Bayes推定による,回答者個人毎の選好意識の推定を行い,選好意識の類似性からセグメントを定めるアプローチを採用して再分析をおこなった.その結果,(1)図書館の利用パターンと資料の種類に関する選好を主軸としておおむね4つから5つのセグメントに回答者を分類できること,(2)図書館の利用-非利用について,図書館側のサービス要件だけでは十分に説明できないことを明らかにした. 第二に,上記に並行して新規サービス展開の典型パターンとして「情報化への対応」に対する図書館利用者の意識に特化した調査分析を行った.ここでは,公共図書館におけるインターネットサービスに対する利用者の選好意識構造を把握するために,コンジョイント分析法を用いて「サイトの制限」,「職員の援助」,「時間の制限」,「待ち時間」,「プライバシー」,「活字資料との併用」,「申込みの有無」の7つの要素について茨城県立図書館の来館者470人を対象に調査を行なった.その結果,インターネットへの習熟度や来館目的によって,「職員の援助」や「サイトの制限」などの評価に差が生じること,また,利用者は「プライバシー」を重視する傾向が強いことなどが分かった.このような違いを踏まえて,それぞれの図書館でインターネットサービスの位置づけを明確にすることや重点を置くべき提供環境などについて考察した.
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