研究概要 |
図書館の非利用者と利用者の選好構造の差異の分析を目的に,一昨年度に実施したつくば市民を対象とした質問紙調査,昨年度のHierarchical Bayes推定による回答者個人毎の選好意識の分析,同じく昨年度の図書館のインターネット端末利用者に対する選好意識の分析結果をもとに,住民調査による選好意識調査を設計して実施した.調査対象地域は市立図書館が良好なレファレンスサービス活動を継続していることで知られる,千葉県成田市で,図書館サービスへの選好意識に加えて,市民のメディア利用と図書館の利用経験を質問した.個々の市民が情報獲得においてどのような態度を有しているかと,図書館サービスへの選好意識のパターンとの関連を中心に分析を進めた. その結果,一昨年度につくば市で得られた結果と異なり,開館時間が最も強く影響すること,続いて自分の望む資料があること,そして図書館員から得られる支援が影響することが示された.特に,図書館員から得られる支援としては,「興味関心事を調べる手助け」が得られることの評価が高く,「読書相談」の評価が低いことが明らかになった. 個人の選好意識のパターンをもとにクラスター分析による類型化を行うと,2つないし3つのセグメントに分類された.昨年度のつくば市民が4つから5つに類型化できたものに対して,類型がはっきりとしない傾向にあるが,図書館の利用-非利用に関する軸が分類に大きく影響している点は共通している. また,メディア利用の態度と図書館の利用-非利用選好は有意な関係にあり,図書館サービスに関する選好意識パターンのセグメント形成に関係があることを示した.
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