研究概要 |
本研究は,和古書を主な対象とした総合目録データベース構築に関する問題を考察することを目的に進めている。今年度は,書誌データの採録を通して実際上の問題を中心に次の点について考察した。 1)和古書を対象とした際の必要な書誌記述項目について 和古書所蔵機関の協力のもと,実際に現物から書誌情報の採録実験を行った。殊に刊本における識別をある程度可能にするための書誌事項は何かを念頭に記述の情報源に注目しながら採録した。結果として,資料の分野や成立(製作)の時代によって,記録を要する項目や内容が多様であることが確認できた。従って,全体に共通する記録内容をベースに,より柔軟な内容を記録し,必要に応じて所蔵機関間で協調できるシステムが求められると考えている。 2)記述の情報源の提示 記述の情報源を書誌情報利用者に提供する意義は大きいが,再現性には限界がある。それを補う意味で,記述情報源となった箇所のイメージ・データの提示を提案した。和古書に限らず古典籍資料の書誌情報においては,書誌項目の一つとして捉えて利用者に提供することで,識別機能が格段に補強されると考えている。採録実験においても,すべての資料のイメージ・データを採録した。 3)著作典拠と書誌情報 和古書は同一の著作であっても記載されている書名は様々であり,作成されてからの現在に至るまでの間に情報源が紛失あるいは改変されていることもある。書名は極めて不安定であるという和古書の特性を考慮すれば,著作典拠との関係を明示することは極めて重要である。和古書総合目録において,識別のための「著作」とはどのような実体であるのかを考察するため,『国書総目録』を著作典拠ファイルと仮定して検証を行った。その結果,様々なレベルの「著作」が混在し,今後その基準について考察を進めていくことにしている。 3月末に研究成果報告書を刊行した。
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