研究課題
本研究は、図書館や情報サービスのユーザがどのようなきっかけからどのような目的(ゴール)のためにどのような状況の中で情報探索に取り組み、きっかけや目的や状況がユーザの情報探索プロセスと情報源評価にどのような影響を及ぼしているかを捉えている。それを基に、ユーザ状況を反映した情報探索プロセスの概念モデルを構築した。この概念モデルは、ユーザが自らの情報ニーズや状況をインプットすればそれに対応した形で情報源を表示するような次世代電子図書館設計のための基礎となりうるものである。「情報行動文法モデル」と命名されたこの概念モデルの枠組みは、研究代表者の博士論文のための研究において仮説として構築された。このモデルの適用範囲を一般の情報探索行動に拡張することを目指して、学術振興会科学技術研究費の基盤研究(C)に「ユーザ状況を反映した情報探索プロセス概念モデルの研究」とする研究課題で応募し、幸いにも4年間にわたる研究費を得ることができた。本研究の中核は、社会科学領域の研究者10名のインフォーマントから聞き取った、「研究」、「教育」、個人/家族の意思決定」の3種の目的のための情報探索プロセスに関する物語の内容分析である。分析結果から、「研究」と「教育」に関しては、情報行動文法モデルがほぼ当てはまることを把握できた。他方、「個人/家族の意思決定」に関しては、インフォーマントの日常生活に深く埋め込まれていること、時系列に沿って情報探索プロセスの詳細を想起することがインフォーマントにとって困難であることから、モデルとの整合性を確認することはできなかった。この研究成果を踏まえて、今後はインフォーマントの情報探索行動により密着したデータ収集を重ねることで、更なるモデルの拡張を試みる予定である。この課題研究を糸口に、研究を深化し拡張することで、利用者にとってより使いやすい電子図書館や情報検索システムのインターフェイス開発に役立つことを期待している。
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Information Research (an International Electronic Journal) Vo;.12, No.2(http://information nr.net/ir/)
TP&Dフォーラム 2006
ページ: 13-27