研究代表者の廣瀬は、特に重点的に「概念化とテクスト産出プロセス」を研究した。具体的には、自らの研究で収集したプロトコルの分析結果を再考察し、母語(第一言語)文章産出プロセスとの比較において、第二言語の文章産出プロセスにみられる認知上の特徴を精査した。その結果、第二言語でも熟練した書き手の場合は、第二言語への文章化を自動的に行えるレベルに達しており、語彙検索や選択の時に第一言語が参照される兆候がみられた。さらに、第一言語作文時よりも第二言語作文時の方が、書きはじめる前に詳しいプランをたて、そのプランが文章化をより厳密に制御し、モニターとして機能していることがわかった。これらの相違点を除いては、熟練した書き手は、第二言語でも自らの第一言語の文章産出プロセスと類似したプロセスを辿る傾向があることが明らかになった。その成果は、今後論文にまとめる予定である。 また、昨年9月には当プロジェクトの一環として京都大学山梨正明教授を名古屋に招聘し、認知言語学に関する講演会を実施した。このことによって、当研究の原理論的側面に関して大いに成果が上がった。 研究分担者宮原は言語コミュニケーションの構造を「情報」という観点から分析し、人間にまつわるさまざまな層の「合理性」をたてわけ、「合意」を目指すコミュニケーション独自の合理性の特質を解明した。具体的には規則追従的行為の有する「規範的合理性」、ある目的を実現するために戦略的に振る舞うときの「戦略的合理性」、さらに「コミュニケーション的合理性」といったレベルをたて分けた上でその「コミュニケーション的合理性」の特色を明らかにした。それは中部哲学会(岐阜大学にて開催)でのシンポジウムで口頭発表し、同学会の年報に掲載された。また、言語テキストの解釈に関して、現代哲学の視点から広範なテーマを論じた著書を著した。
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