平成16年度は3歳児から6歳児までの日本語モダリティ表現理解の実験実施、分析、発表を行った。モダリティ表現は、文末助詞の「よ」「かな」「って」に加えて、心的動詞の「思う」「知っている」、証拠的動詞の「見る」「聞く」を加え、品詞による理解度に差が出るかどうかということも調査することにした。三鷹市、武蔵野市の保育園、幼稚園に協力を要請し、97名の被験者を対象に実験を行うことができた。実験方法としては、Mooreらが1989年に行った、Hidden Object Taskを改良したものを使用した。 結果として、3歳児は「よ」「かな」の違いを理解することはできたが、文末助詞の「って」、心的、証拠的動詞などは理解することができないことがまずわかった。4歳児になると、「思う」「知っている」の違いを理解することができた。証拠的動詞の「見る」「聞く」の証拠性の強さの違いの理解は、6歳児にとっても困難だということも明らかにされた。 この実験の結果は、7月にヨーロッパで、11月にアメリカで発表し、多くのフィードバックを得ることができた。11月の学会のProceedingsに実験の分析結果が掲載されている。2月にはより詳細な分析を含めた論文を学術誌に投稿した。 12月以降は、これまで一般に他者の心的状態を推測する能力の発達を判断するための基準として使用されてきた「誤った信念課題」に、モダリティ表現を含んだ発話を加えた実験に取り組んでいる。この結果は17年春にはまとめられ、夏に発表する予定である。
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