研究概要 |
本年度は以下の3つの実験を生後2-8ヶ月の乳児を対象に行った. 形態知覚:物理的に存在しない情報を補って形を知覚する能力はモーダル補完とアモーダル補完に分類される.近年これらの補完が共通の形態補完メカニズムに依存するかどうか議論されている.そこで,モーダル・アモーダル補完の知覚の発達時期を比較する実験を行った.その結果,モーダル補完は3-4ヶ月頃から,アモーダル補完は生後5-6ヶ月頃から発達することを示す結果が得られた. 視線認知に及ぼす3次元情報の検討:3次元情報を含めて視線方向を認知する能力の発達を検討した.成人は視線方向を認知する際,顔の向きなどの3次元的要因と目の向きを統合した処理を行っている.この能力の発達を検討するため,視線方向の認知に顔向き情報が影響し始める時期を確定するための実験を行った.対象児は顔向きの変化に注目できるようになる生後4ヶ月齢から8ヶ月齢の乳児であった.その結果,生後8ヶ月齢になると,顔の向きと目の向きを統合した処理が生じると示された. 拡大/縮小知覚の非対称性の検討:網膜像の拡大/縮小は,対象の接近/後退や,観察者自身の前進/後退運動知覚の主要な手がかりとなる重要な視覚情報である.ここでは,成人において明らかにされた拡大/縮小知覚の諸特性のうち,拡大/縮小運動の探索非対称性の発達過程を検討した.対象児は生後2ヶ月齢から5ヶ月齢の乳児であった.その結果,生後3ヶ月頃からこの非対称性が生じることが明らかにされた.
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