本研究は、情報検索システムを利用して検索行動をおこなう過程について、刻々と推移していく状況の中で生じる行動を記述的にとらえることから出発して、検索者の認知的な側面をとらえ、状況との相互作用という視点から検索行動の実態を明らかにすることを目的としている。今年度はまず、既存の眼球運動計測システムのコントローラーに非接触型アイマークレコーダを接続し、ソフトウェアのバージョンアップにより、LANに接続されたパソコン画面上の注視位置を計測することを可能にした。被験者は、頭部を固定した状態でOPACによるデータベース検索をおこない、その間の注視点の移動をビデオに録画し、既存の解析ソフトにより時間と位置の関係を数値化した。東洋大学図書館のOPACの書誌検索画面は、基本的にテキスト入力ボックスとボタンからなり、フレームを使用した画面構成となっている。注視点の移動パターンの特徴としては、画面全体を見回す行動はほとんど見られず、検索語の入力も一つのテキストボックスに限られる場合がほとんどであった。検索結果の表示では、大量にヒットした場合に一つ一つの書誌情報を順に注視することはせずに、ブラウザの「戻る」ボタンで検索語入力画面に戻る行動が多く見られ、画面上に表示される情報量が多すぎることが示唆された。また、継続しての絞り込み検索ができないことが、ユーザーインタフェースを損なっており、画面上にある「戻る」ボタンが使われないことも、検索作業上は問題がないものの、画面構成の問題点として指摘できた。まだ予備的実験の段階で、さまざまな検索状況で出現する検索パターンを分類し、論理的な絞り込みの認知過程との関連を調べている。被験者数を増していくと、データ量が膨大になる可能性があり、指標をある程度固定して検討する必要性を認識している。
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