研究概要 |
高齢者のエラー反復のメカニズムを明らかにするため,(a)昨年度に引き続き「ルアーを伴う漢字選択課題」におけるルアー/ターゲット間の位置関係とチェック方略の変化について明らかにするため,課題遂行時の注視点分析を行ったところ,とくに若年層の判断にはほとんど注視点の変更が伴わず,内的な並列・系列処理を外的な眼球運動で捉えることは困難であることが示唆された,また,高齢者については多様な注視点変化パタンが示され,眼球運動の結果と外的な行動(反応時間を含む)の関係性については,さらに詳細な検討が必要であることが示唆された.なお,注視点による変化を明示化するために,問題提示方法ほかの実験手続き再度検討する必要が示され,今後の課題とされた.(b)「ルアーを伴う漢字選択課題」で行動上のエラー反復を発生させるための課題変更として,要因として候補項目の空間配置のランダム化(非直線化)と一部の候補項目の刺激顕在化を加えて大学生を被験者とした実験により検討したところ,空間ランダム配置により通常状態でも3%程度のエラー反復が発生すること,さらに注意分割条件下(2秒ごとの1-back追唱課題を副課題とする二重課題状況)では,10%程度のエラー反復が観察されることが示された.このことから,エラー反復には,刺激顕在性,空間的手がかりの有無と共に注意機能の問題が大きく関与することが示唆される.またいずれの実験条件においても,刺激顕在性の高い条件のほうが反応時間が長いにもかかわらず,内省報告では顕在性の高い実験条件の方が「反応が容易だった」とする被験者が多く,主観的判断と行動上の反応のずれがエラー反復現象と何らかの関係があるのではないかと考えられた.
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