主要な成果である「イメージ情報の分かりやすさの解明」「イメージ情報の解釈過程の解明」について概要を記す。 ・イメージ情報の分かりやすさの解明 思考伝達手段としてのイメージ情報の分かりやすさを解明するために、それらが結びつき得る指示対象の範囲とそれぞれの結びつきの強さを求めることとした。このために、携帯電話の絵文字から選定した204個の絵文字を材料に図の指示対象を収集した。収集された指示対象は延べ7451個であった。回答者数が2名以上であった指示対象987個と絵文字202個のペアを対象に、結びつきの強さを求めた。大学生52名を対象とした5段階の評定尺度法による実験の結果を、指示対象と絵文字の図との関係により30種類に分類した。分類には、隠喩・提喩・換喩に3分類される比喩の観点を生かした。この結果、イメージ情報の意味として分かりやすいのは、イメージ情報と指示対象の意味が等しい"図標"の他には、カテゴリー概念を利用した"上位"、図が指示対象の表す行為の対象や道具であるもの、また"部分・全体"、"内容物"、"場所"のような空間的隣接性を利用した関係であることが分かった。 ・イメージ情報の解釈過程の解明 絵文字の図の意味を文字で提出し、それぞれの図について収集した指示対象との距離を測定した。図と指示対象の距離と対照させることにより、イメージ情報処理メカニズムの特徴を見出すことを目的としている。先の実験を経験していない大学生52名を対象に、図の概念が具象物である322個の指示対象と図の意味のペアを材料として両者の距離を5段階で評定させた。この結果、時・属性・場所・主体などに分類される意味と指示対象の距離は、意味を語(文字)で提出した方が、距離が近いと評価された。これに対し、上位・因果関係などは意味を図(イメージ情報)で提出した方が指示対象との距離が近く感じられることが分かった。
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