主要な成果である「イメージ情報の分かりやすさの解明」「イメージ情報の解釈課程の解明」について概要を記す。 ・イメージ情報の分かりやすさの解明:概念伝達手段としてのイメージ情報の分かりやすさを解明するために、それらが結びつき得る指示対象の範囲とそれぞれの結びつきの強さを求めた。携帯電話の絵文字から選定した204個の絵文字を材料に指示対象を収集し、絵文字と指示対象の関係(メタファ)に着目した分類を施した。また、指示対象と絵文字のペアを提出し、結びつきの強さを求める実験を行った。この結果、30種類に分類された関係に関し、分かりやすさの順位付けを行うことができた。 ・イメージ情報の解釈課程の解明:30種類に分類された関係のうち、指示対象が多い7関係につき、イメージ情報と指示対象間の関係判定に要する反応時間を測定した。イメージ情報と対比的に言語を刺激とした反応時間も共に測定し、7関係のいずれにおいても、刺激がイメージ情報の場合に反応時間が短いことを実証した。指示対象の生成に用いられる比喩の種類別の考察では、提喩に属する諸関係の反応時間が短く、比喩に属する関係の反応時間の長さが目立った。換喩を用いた諸関係の分かりやすさを律する条件を、反応時間の長短をもとに考察し、次の3点が重要であることが分かった。 1)空間的処理を必要としないこと。「時」のように、関係判定において知覚的シミュレーションを必要としない関係は反応時間が短く、分かりやすい。 2)触覚的身体感覚を持つこと。行為と結びついた関係、特に道具のような身体と結びついた触覚的な感覚として長期記憶に貯蔵されるような関係は分かりやすい。 3)強い隣接関係を持つこと。「部分・全体」のようにイメージ情報と指示対象との関係が内包関係にあるもの、また「内容物」のように両者の接触面が大きいものは強い隣接関係を持つことができ、分かりやすい関係となる。
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