研究課題
自然現象の観測によって得られる時系列データの中には、周期性が強く、確率的な構造が時間と共に緩やかに変化しているように見えるものが数多くある。このような観測データに基づいて非定常なスペクトル構造を推定する場合、データ解析の実際面では定常性をもつとみなすことが可能な時間幅を経験的に与え、その時間幅の時系列データを用いて定常理論に基づくスペクトル密度関数を推定し近似する方法がしばしば行われる。この方法は取扱いが容易であるものの、確率構造の変化の速度に関してどのような近似誤差が発生するか、という点については理論的に不明な点が多い。本研究課題では、この問題に対する理論的側面を統計学的観点より明らかにすると共に、自然現象の観測データに対する適用を通してその正当性を検証することを目的としている。前年度の研究では、1変量の時系列データに対してある時系列モデルをあてはめた際に、確率構造の変化の速度がモデルのパラメータ推定、及び非定常スペクトル密度関数の推定精度にどのような影響を与えるかという問題について、漸近的な手法を用いて考察を行ってきた。本年度では、この考察を時間と空間の双方の側面をもつ観測データを取り扱う状況に拡張し、これを時空間データとみなして時空間モデルをあてはめた際に、確率構造の変化とパラメータ推定の精度について考察するための基礎研究を行ってきた。本年度は、時空間データに関する取扱いに慣れていなかったために当初予想していなかった様々な問題が発生し、結果として時空間相関の構造が短期間しか維持されないような時空間データへのモデル同定に関する方法論の考察や予測の特徴まではわかってきたが、確率構造の変化の速度がモデルのパラメータ推定やスペクトル密度関数の推定へ与える影響までを考察するには至らなかった。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
Contributed Papers in the 55th session of International Statistical Institute (to appear)
科学研究費研究集会「時空間統計解析の理論と応用」
Workshop on Prediction for marine resources, The Institute of Statistical Mathematics