推定関数の正規化変換による信頼区間の構築 信頼区間による推測は統計的推論の典型的な形式といえる。信頼区問の構築における典型的な方法は、漸近的に標準正規分布に従う枢軸統計量と呼ばれるものに基づく方法である。この方法の本質は枢軸統計量の分布を標準正規分布で近似することである。正規分布の近似の改善については色々な研究がなされている。よく知られている研究の中で、正規化変換という手法がある。正規化変換の理論は、適当な単調変換によって変換された枢軸統計量の分布をよりよい精度で正規分布で近似できることにある。これらの研究では、推定量が陽に与えられていることを前提としている。本研究の目的は、推定量が非線形推定関数によって定義されるとき、2次の精確性を持つ信頼区間の構築である。推定方程式を解くことなく、不偏推定関数に対して直接正規化変換を施すことによって、2次の精確性を持つ信頼区間の構成法を提案した。また、ボアソン回帰問題や相関係数の推定問題において、従来の方法に比べて同等化かまたは勝っていることも数値的に確認した ところで、推定関数による2次の精確性を持つ信頼区間の構築に関する研究で、最近ブートストラップ推定関数法が提案されている。この方法は計算機から発生される擬似乱数を使用することによって、信頼区間の精度を上げる方法である。本研究で提案された正規化変換による方法は、ブートストラップ推定関数法と漸近的に同じ精度を持つ。しかし、本研究での方法は解析的であるため、非常に簡便的といえる。また、数値的にもブートストラップ推定関数法に優れていることを確認できた。
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