研究概要 |
昨年の研究に続いて、今年度では推定方程式(Wang and Taneichi,2006)や,擬似尤度(Wang,2006),ブートストラップ(Jing and Wang,2006)などの領域においていくつかの進展があった。 また、今年度では傾向スコアに基づく因果推論について、いくつかのセミパラメトリック有効推定量を提案し(勝山・汪(2005).小学校に英語の授業を導入する効果の推定について,2005年度統計関連学会連合大会,2005年9月12日-15日(広島),p.256.)、また具体的な教育現場のデータへの適用を試みた(勝山・西垣・汪,2006)。 最終年度の今年度では、上のような研究成果を纏めながら、更に新たな展開として、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)に基づく統合的脳機能の研究にも取り組んだ。研究成果の一部をWang(2006,The coin algebra for conditional independence.京都大学数理解析研究所の短期共同研究会"Statistical Conditional Inference and Its Related Topics"(研究代表者:赤平昌文(筑波大学)),2006年3月13日-3月15日)にて発表した。この研究では統計的因果推論の基礎である条件付独立性の代数系を構築した(Wang(2006),The coin algebra : a calculus for probabilistic conditional independence, Manuscript,全60ページ)。得られた知見として、例えば、確率変数間の因果性を予測十分性で定式化し、また後者はある群(コイン群)のなす空間の中のひとつの点として理解することができる。従って、最適因果モデルの発見は、コイン群空間の中のある特徴を持った同値類を見つけることを意味する。このように、統計モデルをコイン群で定義し、コイン代数系の構造を研究することにより、統計的因果モデルの構築が可能となることを示唆した。
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