研究概要 |
本研究では,ダイナミックモデルを適用するデータをまずデータの種類からパネル形式のデータ、時系列データ、クロスセクションのデータに分類し、それぞれのデータの特徴に適合するモデルを開発している.パネルデータでは和合・大森がパネル構造を取り入れた回帰モデルや従属変数に制約のあるモデル、デュレーションモデルなどのMCMC法による推定方法を研究し、時系列データでは渡部・和合がファイナンスデータの多変量非線形時系列モデルを、大森はトービットモデル、ロジット・プロビットモデル、(標本選別を含む)計数モデルなどを研究している. たとえば,Omori(2003)(J.Japan Stat.Soc.)において,わが国における景気循環の分析を行い,ディフュージョンインデックスの構成要素である11の系列について,上昇・下落の継続時間の確率構造を明らかにした.各系列は個別の動きをもつと同時に共通の変動要因も共有しているパネルデータの形式になっており,これを具体的にモデル化し推計した.その結果1970年代では顕著であった共通変動も次第にその影響を弱めてきており,1990年代では有意ではなくなってきていること,また継続時間のハザード確率が比較的一定になってきていることなどが確認されている.また,Wago(2004)は平滑に推移するGARCHモデルをギブス・サンプラーを用いて推定しており,三井・渡部(2003)では,MHアルゴリズムによる厳密なベイズ推定を行ってGARCHオプション価格付けの分析を分析している.このほか,MCMC法の入門とMCMCを用いた多くの実証分析を集め,和合編「マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた応用計量分析」(東洋経済新報社)も出版が予定されている. 我々は日本統計学会において平成14年に続き,平成15年にも「マルコフ連鎖モンテカルロ法の計量経済分析への応用」を共通テーマとして設定し、その成果を発表した.また,日本経済学会やJAFEEなどでも研究成果を発表したほか,マルコフ連鎖モンテカルロ法の紹介を統計数理研究所における公開講座や,統計学と保険の関連を重視して日本アクチュアリー会の大会において行ってきた。一方,平成15年度にはChib教授(ワシントン大学セントルイス校),Bauwens教授(ルーベン大学CORE),Poirier教授(カリフォルニア大学アーバイン校),Polasek教授(バーゼル大学),Lopes教授(シカゴ大学ビジネススクール)ら海外で活躍する研究者を招聘に協力してコンファレンスやセミナーを開催し,研究交流を深めている.
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