本研究では以下の成果が得られた:信用リスク問題では、Duffie-Singletonモデルの離散時間への展開とマルチファクター化を中心に研究を行ってきた。結果の一部は2004年7月に一橋大学に於けるセミナーで発表し、現在論文を作成中である。また、モデルに於けるパラメータの推定や関連分野の研究に関し以下の研究が遂行されてきた。 1.有限標本空間における漸近理論:この分野では博士課程の学生元山氏との共同研究が主である。有限標本空間に於けるU統計量やVonMises型の統計的汎関数で表現される統計量の漸近的な性質、大偏差原理とエッジワース展開について研究してきた。その結果はBootstrap法の精度に関する研究に応用されている。 2.バリアータイプオプションの価格決定問題:森本との共同研究では幾何ブラウン運動の境界交差問題をオプション理論に応用し、新しいタイプのオプションの構築と価格計算。さらに、それを離散時間モデルへと発展させた。結果の一部は2004年10月に開催されたThe 8^<th> China-Japan Symposium on Statistics (Guillin China)で公表した。 3.天候デリバティブの価格決定問題:戸辺、川野輪との共同研究で東京と名古屋の気温データに基づく天候デリバティブのための気温モデルの構築を行った。ここでは比較的簡単な気温の統計学的モデルを構築し、平均気温に我々の主観を取り入れる事が出来るモデルを構築した。実証的にもモデルの精度は確認された。 4.不完備市場における価格決定問題:不完備市場に於ける派生証券の価格決定に関し、之までとは異なる新しい方法を提案した。不完備市場内に埋め込まれた完備市場を考えることにより、非常に簡単なモデルにより合理的な価格決定が可能となった。
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