本研究は1ニューロン前駆細胞の増殖能を培養系で長期間維持すること、2ニューロン前駆細胞を神経幹細胞へと先祖帰りさせることが可能かどうか検証すること、の2点を目的としている。 1 我々はマウス小脳顆粒細胞ニューロン・前駆細胞(GCPs)を材料として研究を進めており、平成15年度に未分化GCPsを選択的に調製する手法の開発に成功した。本年度の研究では未分化GCPsを増殖因子の存在下に培養しても大部分の細胞は細胞周期を脱して最終分化を開始することが明らかになった。これは混入している分化開始後GCPsから増殖停止シグナルが出ているためか、増殖能を維持する因子が欠けているためであると考えられたので、さらに純度の高い未分化GCPs標品の調製を試みた。またこれと並行してGCPsの増殖能を長時間維持する因子の探索を続けた。 2 幼弱(生後7日目前後)マウス小脳から単離した細胞の中には上皮細胞増殖因子(EGF)刺激で盛んに増殖するGFAP弱陽性細胞が存在することを見出した。この細胞はGFAPの他に神経幹細胞のマーカーとされるネスチン、放射状グリア(radial glia)のマーカーとされるBLBPやRC2も発現している。また細胞接着用のコーティングをしていない培養皿上に播種するとneurosphereを形成する。このneurosphereをPDLでコートした培養皿上に播種し直すと、大部分はGFAP強陽性の細胞となるが、一部はβチューブリンIII陽性のニューロンに分化することが明らかになった。すなわちこの細胞は神経幹細胞と考えられたので、この細胞が発生期小脳のどの細胞種に由来するものであるかの検討を進めた。
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