研究概要 |
本研究において私は視覚性対連合記憶課題遂行中のマカクザルを用いて、大脳下部側頭葉内のTE野(視覚新皮質)と嗅周皮質(辺縁皮質)から単一神経細胞活動記録を行い以下の結果を得た。 3匹のサルから計2,368個のニューロンを嗅周皮質(510個)とTE野(1,858個)から記録した。これらの内、423個(嗅周皮質、76個;TE野、347個)のニューロンが手掛かり刺激の提示に対して1%の有為水準で刺激選択的な反応を示した。以下、これらのニューロンをcue-ニューロンと呼ぶ。私はこれらcue-ニューロンが刺激ペアをコードしているかどうかを調べるために相関係数を用いてペアコーディングインデックス(Pair-coding、PCI)を定義した。そうしたところ、嗅周皮質とTE野のcue-ニューロンが示すPCIの値は共に有為に正の値を示したが(P<0.001)、嗅周皮質が示すPCIの値(中央値、0.51)はTE野(中央値、0.14)に比べて非常に高い値を示した(P<0.001)。 さらに私は嗅周皮質の神経応答でみられる対連合符号化が、手掛かり刺激の提示により誘導される神経発火の開始と同時に現れるか否かを調べた。嗅周皮質では全Cue-ニューロン中、33%のニューロンでPCIが有為(P<0.01)に正の値を示した(ペアコーディングニューロン)。これら嗅周皮質のペアコーディングニューロンに対して、手掛かり刺激提示直後の一過性視覚応答を解析したところ、その内68%が刺激選択性を示し始めると同時に図形ペアをコードし始めるという結果が得られた。 これらの結果はTE野から嗅周皮質への前向情報処理が視覚長期記憶の記銘に関与することが支持するものと考えられる。(Naya et al.,2003,J.Neurosci.)
|