研究概要 |
BRS-3のもつ摂食と代謝調節という重要な機能が発現されるしくみを解明することを目的として、BRS-3が視床下部においてどの様な食欲制御ペプチドとその受容体と関わって食欲制御ネットワークを形成しているのかを調べた。BRS-3欠損マウスではレプチンによる食欲抑制効果が減弱しており、レプチン抵抗性を示すこと、またこれは、食欲増進効果をもつメラニン凝集ホルモンの働きが昂進していることが一つの原因となっていることが明らかとなった。実際に視床下部におけるメラニン凝集ホルモンとその受容体の発現量が増加していることも確認できたので、BRS-3はメラニン凝集ホルモンのシグナリングを制御することにより、摂食・エネルギー代謝の調節をしていることが示唆された。BRS-3を組織特異的、発生段階特異的に過剰発現するマウスを作成するために、CAGプロモーターの下流にloxPをはさんでコンディショナルにBRS-3を発現できるようなベクターを構築した(Novak et al.,2000)。これをES細胞に導入し、クローンを単離してマウス胚盤胞に注入することによりキメラマウスを得た。一方、種を越えた普遍的な役割を調べるために、鳥類におけるボンベシン様ペプチド受容体の探索を行った結果、chGRP-RとchBRS-3.5が新しくクローニングされた。前者は両生類・哺乳類GRP-Rとアミノ酸の相同性が高く、そのボンベシン様ペプチドに対する親和性もそれらと似ていた。chBRS-3.5は鳥類に特異的な受容体であるが、両生類BB4や哺乳類BRS-3の両者とある程度の相同性を有し、ボンベシンに高い親和性を示した。脳内ではchGRP-Rは視床下部にほぼ限局した発現をしているのに対し、chBRS-3.5はpalliumを中心とした領域に広く分布していた。この結果は、種を越えたボンベシンペプチド系の重要性を示唆している。
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