線虫のグルタミン酸受容体(GLR-1)とGFPの融合タンパク質をglr-1遺伝子のプロモータ制御下に発現するトランスジェニック線虫を作製した。GFP-GLR-1シグナルは神経細胞の軸索上にクラスター状に局在しており、プレシナプスタンパク質のUNC-10の免疫組織染色により、GFP-GLR-1クラスターの一部はシナプスに局在することが確認された。腹側神経束のGFP-GLR-1クラスターを二光子励起レーザー顕微鏡を用いて経時的に観察したところ、1日に1度の観察から幼虫の発生によって体長が伸びるのに伴って新たなクラスターが現れること、1時間に1度の頻度の観察でによりすでに存在しているクラスターも位置や形を変えること、1秒に1度のリアルタイム観察により秒速約1マイクロメートルで突起方向に移動するクラスターが観察された。これらの結果から、線虫生体においてこれらシナプスタンパク質がクラスターは成長に伴い可塑的に変化すること、これらの変化は数時間の間に観察されるものの数分の単位では安定であること、またシナプスタンパク質が神経突起中をクラスター状で輸送されることが明らかとなった。一方、線虫の神経回路のうち特定の神経間の連絡を担う特定のシナプスを同定して経時的に観察するために、プレシナプスのタンパク質SNB-1とCFPの融合タンパク質をsra-6プロモータ制御下で、GFP-GLR-1をnmr-1プロモータ制御下で発現するトランスジェニック線虫を作製した。SNB-1-CFP少数の頭部および尾部の感覚神経細胞で発現し、軸索上にクラスター状に局在した。そして、そのうちのいくつかのクラスターが解剖学的にシナプスを形成するとされる位置でGFP-GLR-1クラスターと対になって存在していた。現在、このように2つのマーカーで同定されるシナプスが線虫の神経系で有効に機能しているものかにつて、変異体のレスキュー実験により確認を進めている。
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