神経細胞の発火パタンはその細胞の持っているイオンチャネルによって決定される。チャネルの機能を決定する因子はチャネルの密度と性質であるが、神経細胞はどのようにこれらの因子を調節して正常な機能を実現しているのかは明らかになっていない。本研究代表者らは、線条体コリン作動性ニューロンをモデルに、K+チャネルの密度と性質が発達過程において調節される機構について調べてきた。今回はコリン作動性ニューロンK+チャネルの再分類と機能について調べた。mRNAの発現パタンを知るために、単一細胞RT-PCR法を用いて調べた結果、すべてのコリン作動性細胞がKv1.1を、80%の細胞がKv1.2を、そして25%の細胞がKv2.1を発現することが分かった。また、kv3.1とKv3.2の発現が認められなかった。一方、線条体スライスにおいて、TEAの投与でコリン作動性ニューロンの発火パタンが変化し、遅延整流性電流がコリン作動性ニューロンの発火パタンに重要な働きをしていることが分かった。mRNAと電流の対応関係を調べるために、急性単離したコリンニューロンを用いて、電流を薬理学的に分類することを試みた。Kv1電流を阻害する薬品としてデンドロトキシンが知られているが、それをコリンニューロンに与えたところ、顕著な効果が認められなかった。しかし、一過性のA型電流を阻害する薬品として知られている4-APを低濃度で与えると、素早く活性化し、ゆっくり不活性化する電流が阻害された。この電流は海馬等のニューロンで見つかっていたD電流の性質によく似ている。TEAで阻害された電流はいわゆる古典的な遅延整流性電流であって、D電流に比べると、ゆっくり活性化し、ゆっくり不活性化した。このように、コリン作動性ニューロンに遅延整流性電流とA電流以外に、新たにD電流の存在が明らかになった。よって、A電流とKv4、D電流とKv1、遅延整流性電流とKv2と、それぞれ対応する可能性が示唆された。
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