研究概要 |
ゼブラフィッシュの脳の中で,毛細血管がほとんど走行していない領域が脳のあちこちにあることが分かった。面白いことに、血管はアストロサイトが分布している領域(Area I)に多数走行し、アストロサイトのない領域(Area II)では走行が少ない事も分かった。脳全体では、血管走行のあまりないArea IIの部分は、約1/3位を占めている。 Area IIはむしろ多数のニューロンが詰まっている領域であり、網様体とか、視蓋深層の視覚関連ニューロンが多数存在する領域とか、視床下部の上部とか、進化的に古い脳の領域に多く見られた。このような血管のない領域などはヒトやラットの脳を扱っている人には非常識な事であり、このような場所が存在するということも知られていないが、下等脊椎動物の脳内には存在するようである。Area Iのニューロンでは、付近を豊富に走行している血管からアストロサイトを通してグルコースの供給がされているのであろうが、Area IIのニューロンはどのように生活しているのであろうか、という事に興味を持った。 研究の結果、このような領域にはエッペンダイモグリアの太い突起が多数伸びていることが分かった。この大型細胞の細胞体は比較的脳室に近いところにあり、脳室に顔を出す突起の先端にはアクチンからなる微絨毛を持ち、また軟膜側に伸びるより太い突起を持つ、という特異的な形態を示す。血管走行領域では,アストロサイトが血管から栄養を取り込み,血管走行領域の神経細胞に渡し,また血管のない領域ではこのエッペンダイモグリアが無血管領域に脳脊髄液から取り込んだ栄養を送っていることが示唆された。
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