平成15年度の研究を当初の計画にそって開始し、光学的計測により方位選択性カラムを記録したネコ一次視覚野におけるパルブアルブミン(PV)含有GABAニューロンの分布を形態学的に検討した。18野表面に平行な連続切片を作製してPV陽性ニューロンを可視化し、その3次元的位置をコンピュータ連動画像解析ソフトでトレースし、同じ場所であらかじめ得た方位選択性カラムと重ね合わせて、細胞体の分布パターン、分布密度と特異点との関係、個々のニューロンに由来する樹状突起が特定の方位選択性カラムに偏った広がりを示すかどうかなどの点に対する解析を開始した。平行して、電子顕微鏡によるギャップ結合の同定に着手した。本研究の最終目標は、ギャップ結合を介して連結したPVニューロンのネットワークが方位選択性カラムといかなる空間的関係を持つかという点の解明であり、そのためにはギャップ結合の正確な同定が前提条件となる。従来大脳皮質ではサルでSloperが、そしてラットで私が電子顕微鏡により示した以外に、形態学的に確かな所見が得られていなかったギャップ結合の存在を、平成15年度に始めてネコの一次視覚皮質で見いだすことができた。さらにニューロンのギャップ結合を構成する蛋白質コネキシン36(Cx36)の免疫組織化学染色を試みた。これまで利用可能であったCx36の抗体はどれも非特異的な染色を含んでおり使用に耐えなかったが、本年度新たに試みた抗体は、ネコの一次視覚野において非常に特異的な結果を得た。すなわちCx36とPVの二重染色の共焦点レーザー顕微鏡観察において、PVの樹状突起間のコンタクト部位に一致するCx36陽性の点状染色を同定し、さらに同じ部位を電子顕微鏡観察し、その場所に間違いの無いギャップ結合を確認することができた。以上のように解析の前提となる方法論を確立できたので、以後二年間で新知見を提示できる見通しである。
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