研究概要 |
GABAは、神経系における主要な抑制性伝達物質として神経の電位活動の制御に加えて、覚醒、睡眠、概日リズムや学習、運動、感覚情報処理など脳の機能を構築する上で中心的役割を果たしている。GABAは、グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD ; GAD65,GAD67の2型存在)によって合成される。本研究では、GAD遺伝子の誘導型ノックアウトマウスの作成を目指した。また、非神経系の組織におけるGABA陽性細胞について検討した。 tetracycline-controlled transactivator (tTA)システムを利用したトランスジェニックマウスの作成について検討した。具体的には、GAD65,GAD67の各遺伝子をコードする大腸菌人工染色体(BAC) cloneについて、大腸菌内での相同組み換えを利用した遺伝子標的法でGAD67(あるいはGAD65)遺伝子プロモーターの下流にtTAを配置したコンストラクトの作成を目指した。しかしながら、GAD67遺伝子がコードされているBAC cloneを用いてGFPを発現させるトランスジェニックマウスでは、目的の遺伝子が一部のGABAニューロンにしか発現しないと最近報告された(Chattopadhyaya et al.,2004)。今後は、BAC cloneに代えてES細胞での相同組み換えを利用したシステムについて検討し、誘導型ノックアウトマウスの作成を行う。 膵ランゲルハンス島など非神経系の組織、細胞においてもGABA陽性細胞の存在が知られている。非神経系におけるGABAの機能を明らかにする目的で、雄マウス生殖器におけるGABA陽性細胞を探索した結果、精巣上体頭部にあるapical細胞がGABA陽性細胞であることを明らかにした。さらに、apical細胞にはGABA-B受容体の発現が認められた。今後は、apical細胞におけるGABAの機能について検討する。
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